山ノ前の家House in Yamanomae

設計コンセプト

山や田畑に囲まれた集落にあるお寺の庫裏と書院の建て替え計画です。
敷地は640坪と広く、配置計画には多くの検討を要しました。
既存の本堂の大屋根との調和を図るため、庫裏には雁行型、書院にはコの字型のプランを採用し、寄棟の小さな屋根を連続させることで、本堂にそっと寄り添うような建築を考えました。
 
日々の食事と来客時のお茶出しに必要なキッチンは、庫裏と書院の間に配置し、双方からのアクセスを容易にしました。また、家事の合間に使用できるワークスペースも設け、この建物が建物の中心的な役割を果たしています。
 
敷地の南側には小さな公園、北側には田畑や山が広がっています。
庫裏の居間は南北2面に大きな開口部を設け、心地よい風が通り抜けるよう計画しました。この土地の特性を活かし、天井高を2190mmと低めに設定することで、空間んい安定感を持たせました。
居間に設けた小さな吹き抜けからは午後の自然光が差し込み、日常に心地よい変化をもたらします。
 
眺望のよい2階には家族4人が並んで作業できるライブラリーを設け、ご夫婦の書斎やお子様たちの勉強スペースとして活用できます。
開口部は1階の居間と同様のデザインとし、メンテナンス性や施工性を考慮しました。また深い軒を設け、木製建具の耐久性にも配慮しています。
 
書院は本堂と庫裏の間に位置し、既存の庭を囲むように配置することで、可能な限り樹木の伐採を避けました。
玄関を入り接客用の座敷があり、その奥に住職の装束部屋さらに仏間が続きます。
仏間までの長い通路には、小屋裏収納のトップライトから光が差し込み、単調にならない空間をつくりました。
 
仏間はアール天井とし、格式の高さよりも優しく皆に受け入れられる空間を目指しました。法事や町内の集まりなど、さまざまな用途に対応できるよう、2室に分けられる設計としています。
北側には縁側を介して、既存の日本庭園があり、庭に向かって開口部を設け、全引き込み型の木製建具や雪見障子で庭とのつながりを調整できるようにしました。季節ごとに多彩な表情を楽しめます。
 
この建物の計画にあたり、新旧や明暗、高低など様々な対比を考慮しました。
一つひとつ丁寧に選択を重ね、関わってくださった職人さんたちの高い技量にも支えられ、おおらかで繊細な建築が実現できたと感じています。